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会社経営者や不動産オーナーの方の相続では、自社株や賃貸物件など「分けにくく、評価も難しい財産」が遺産の大きな割合を占めます。そのため、何の対策もしないまま相続が始まると、相続人同士の争いや事業の停滞につながるおそれがあります。
このページでは、資産の種類ごとに注意すべきポイントと、相続トラブルを防ぐための具体的な生前対策について、弁護士が解説します。
富裕層の相続で注意すべき資産別のポイント
相続トラブルの原因や必要な対策は、資産の種類によって異なります。まずはご自身の資産にどのようなリスクがあるかを把握することが大切です。
不動産
不動産は物理的に分けることが難しく、相続トラブルの原因になりやすい財産です。
- 評価額をめぐる対立:相続税評価額と実際の売却価格(時価)には差があり、遺産分割ではどの金額を基準にするかで意見が分かれがちです。
- 共有のリスク:「とりあえず共有で」と相続すると、売却や建替えに共有者全員の同意が必要になります。次の相続で共有者がさらに増え、活用も処分もできなくなるケースが少なくありません。
- 賃貸物件特有の問題:相続開始後の賃料収入を誰が受け取るか、管理や修繕を誰が担うかも争いの火種になります。借入金が残っている場合は、債務の承継も検討が必要です。
- 相続登記の義務化:2024年4月から相続登記が義務化されております。
自社株・非上場株式
会社経営者の方にとって、自社株の承継は会社の将来を左右する重要な問題です。
- 経営権の分散:自社株が複数の相続人に分散すると、後継者が議決権を確保できず、経営が不安定になるおそれがあります。また、遺産分割がまとまるまでは株式が相続人の共有状態となり、株主総会での議決権行使にも支障が生じます。
- 後継者以外の相続人との公平性:後継者に株式を集中させると、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。株式は引き継いでも現金がないため、支払いに困る後継者の方もいます。
- 株価の評価が難しい:非上場株式には市場価格がなく、業績の良い会社ほど評価額が高くなり、相続税の負担も重くなります。
- 名義株・分散株の問題:過去に親族や従業員の名義を借りた株式や、分散した株式がある場合は、生前に整理しておかないと後の紛争の原因になります。
多額の預貯金・有価証券
預貯金や有価証券は分けやすい財産ですが、別の意味でトラブルになりやすい財産でもあります。
- 使い込み・使途不明金の疑い:生前に財産を管理していた相続人に対して、他の相続人から「勝手に引き出したのではないか」と疑いを持たれ、訴訟に発展するケースがあります。
- 財産の全体像が把握しにくい:複数の金融機関や証券会社、ネット銀行に口座が分散していると、相続人が財産を見落としたり、調査に時間がかかったりします。
- 名義預金の問題:家族名義でも実質的に被相続人の財産と判断される預金は、相続財産として扱われます。相続人間の争いや税務調査での指摘につながります。
- 口座の凍結:口座名義人の死亡や認知症により口座が凍結されると、葉儀費用や生活費の引出しにも支障が生じます。
富裕層の相続トラブルを防ぐ具体的な生前対策
資産別のリスクを把握したうえで、生前に適切な対策を講じておくことが、相続トラブルを防ぐ最も確実な方法です。ここでは代表的な対策をご紹介します。
法的に有効で争いを防ぐ公正証書遺言の作成
遺言書がない場合、遺産の分け方は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めることになります。一人でも反対すれば協議はまとまらず、調停や審判に進むこともあります。遺言書を作成しておけば、原則として遺言の内容に沿って遺産を分けることができます。
遺言書にはいくつかの方式がありますが、富裕層・資産家の方には公正証書遺言をおすすめします。
- 無効になるリスクが低い:公証人が関与して作成するため、形式の不備で無効になるおそれがほとんどありません。
- 紛失・改ざんのおそれがない:原本が公証役場で保管されます。
- 家庭裁判所の検認が不要:相続開始後、速やかに不動産の名義変更や預金の解約などの手続きに移れます。
ただし、公正証書遺言であっても、内容によっては争いを防げないことがあります。特に次の点に注意して作成することが重要です。
- 他の相続人の遺留分に配慮した配分にする、または遺留分の支払原資を用意しておく
- 自社株は後継者に集中させ、他の相続人には代わりの財産を用意する
- 遺言執行者を指定し、相続開始後の手続きを円滑に進められるようにする
- 付言事項で、財産の分け方を決めた理由や家族への想いを伝える
- 作成時の判断能力について後から争われないよう、お元気なうちに作成する
生前贈与や「家族信託」を活用した柔軟で安全な資産承継
遺言は相続開始後に効力が生じるものですが、生前贈与や家族信託を活用すれば、生前から計画的に資産を承継することができます。
生前贈与
生前贈与は、ご自身の意思で確実に財産を渡せる方法です。後継者に自社株を少しずつ贈与して経営権を移したり、暦年贈与や相続時精算課税制度を活用して相続税の負担を軽減したりすることができます。
一方で、特定の相続人への多額の贈与は、相続開始後に「特別受益」や遺留分の計算に含まれ、争いの原因となることがあります。贈与契約書を作成して記録を残し、他の相続人とのバランスにも配慮することが大切です。
家族信託
家族信託は、財産の管理・処分を信頼できる家族に託す仕組みです。富裕層・資産家の方にとって、次のようなメリットがあります。
- 認知症による資産凍結を防ぐ:判断能力が低下した後も、受託者である家族が不動産の管理や売却、賃貸物件の修繕・建替えなどを行えます。
- 自社株の議決権を後継者に移せる:株式の財産的な価値はご本人に残したまま、議決権の行使だけを後継者に任せるといった設計が可能です。
- 数世代先までの承継先を決められる:「自分の死後は妻へ、妻の死後は長男へ」といった、遺言ではできない承継の指定ができます。
- 不動産の共有を避けられる:受託者が一元的に管理するため、共有による意思決定の停滞を防げます。
家族信託は自由度が高い反面、契約内容の設計を誤ると、税務上の問題や家族間の新たなトラブルを招くことがあります。信託契約書の作成は、相続に精通した専門家に依頼することをおすすめします。
複雑な財産の相続や事業承継は当事務所へご相談ください
不動産や自社株を含む複雑な財産の相続は、法律・税務・会社法など幅広い知識を踏まえた対策が必要です。また、認知症などで判断能力が低下してからでは、遺言書の作成や家族信託の契約が難しくなるため、お元気なうちの準備が欠かせません。
すがの総合法律事務所では、相続分野に注力する弁護士が、資産の内容やご家族の状況を丁寧にお伺いし、公正証書遺言の作成、家族信託の設計、自社株の承継など、お客さまに合った生前対策をご提案いたします。税理士などの専門家とも連携し、税務面も含めて総合的にサポートします。
「後継者への株式の引き継ぎ方を相談したい」「賃貸不動産をどう分ければよいか分からない」といったお悩みの方は、まずはお気軽に当事務所へご相談ください。
執筆者情報

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