連絡がつかない相続人が存在した事例

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依頼者情報

遺産額:1000万以下

相続財産の種類:自宅、預金、金融資産

争点別:遺産分割

相続人との関係:実の兄弟姉妹

事案の内容

被相続人は、配偶者がすでに亡くなっており、相続人はA、Bの兄弟2名でした。

Bさんは、長期間にわたって家族と交流がありませんでした。

Aさんは、司法書士に依頼し、Bさんと連絡を取ろうと試みました。しかし、Bさんの住民票上の住所に手紙を送っても、郵便は届いているようでしたが何の返答もなく、遺産分割協議ができない状況でした。

そのため、司法書士の紹介で、Aさんが当事務所に依頼をなされました。

当事務所の活動内容

これまでの経緯から、Bさんとの直接の交渉が難しいので、裁判所を通じての解決を図りました。

具体的には、Bさんの住所地の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。

裁判所からBさんの住所であるアパートに書類が送付されましたが、Bさんが調停の場に出席することはありませんでした。

そのため、調停は不成立で終了し、遺産分割審判の手続きに移行し、裁判所は、遺産を法定相続分で分割する内容の審判をしました。

そして、裁判所からBさんに審判書が郵送されたのですが、Bさんは受取をせず、裁判所に審判書が返送されてしまいました。

結果

問題となったのは、「Bさんが住所地に実際に居住しているのかどうか」という点でした。もし、Bさんが住所地にいないのであれば、遺産分割審判をBさんに送達する手続きが円滑に行われないからです。

弁護士は、弁護士会照会(23条照会)という手続きにより、Bさんの住所地であるアパートの管理会社に、居住状況の調査をしました。

その結果、アパートにBさんの賃貸借契約が存続していることが判明したので、弁護士は裁判所に調査結果を報告しました。

裁判所は、調査内容を踏まえ、付郵便送達という手続きによりBさんに審判書の送達を行い、遺産分割審判が確定し、遺産分割手続きが完了しました。

処理のポイント

遺産分割協議は全ての相続人が参加しないといけないので、連絡がつかない相続人がいると、遺産分割協議を進めることができません。

 遺産分割協議ができない場合は、遺産分割調停という手段がありますが、調停に相続人が出席しなければ成立しません。

調停が成立しない場合には、遺産分割審判という手段により、裁判所が遺産分割を命じることになりますが、手続保障のため、その審判書が相続人に有効に送付される必要があります。

 本件では、Bさんが住所地に居住していることが確認できたので、「付郵便送達」という手続きにより、Bさんが審判書を実際に受け取らなくても送達されたとみなされ、手続きは有効に完了しました。

 長年にわたって交流がなく、どこでどのように生活しているかわからない相続人がいる場合は、遺産分割協議が進まない可能性というリスクがありますので、遺言書を作成してそのようなリスクを回避することが対策として考えられます。

執筆者情報

菅野亮
菅野亮
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