多数の収益不動産を持つ場合の相続手続きとリスクについて

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多数の収益不動産を持つ場合の相続手続きの流れとポイント

相続手続きの基本的な流れ

まず、遺言書があるかどうかを確認します。

自宅などで自筆証書遺言が発見された場合は、家庭裁判所に検認の申立てをします。「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

2020年7月以降は、遺言者が作成した自筆証書遺言を全国各地の法務局で保管する制度が開始されております。相続人であれば、法務局に対して遺言の記載内容を証明する遺言書情報証明書や遺言が保管されているか否かの確認ができます。法務局に保管されている自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続は不要です。

平成元年以降に作成された公正証書遺言については、全国の公証役場で作成した遺言公正証書の情報(作成公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等)が管理されています。全国の公証役場において、このシステムで遺言公正証書の有無および保管公証役場を検索することができます。遺言検索の申出は、秘密保持のため、相続人等の利害関係人のみが公証役場に対してすることができます。

遺言が存在する場合は、原則としてその遺言の内容に沿って遺産を処理することになります。

遺言書が存在しない場合は、相続人間で、遺産をどのように分割するのかを話し合います。話し合いがまとまれば、「遺産分割協議書」を作成し、分割内容を書面に残します。その協議書の内容に沿って、預金の払戻し、不動産の登記などの手続きを行います。

 

相続税の申告と納税

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行う必要があります。

申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。

相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署になります。

納税手続きは、税務署や金融機関にて、金銭で一度に納めることになります。

もっとも、相続税については、特別な納税方法として延納と物納制度があります。

延納は何年かに分けて納めるもので、物納は相続などで取得した財産そのもので納めるものです。なお、この延納、物納を希望する方は、申告書の提出期限までに税務署に申請書などを提出して許可を受ける必要があります。

 

遺産分割の方法と注意点

先に述べた通り、遺言書が存在しない場合は遺産分割の協議をする必要があります。

不動産の遺産分割の方法として、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の方法があります。

☑現物分割 

不動産をそのまま一人の相続人が取得する、土地を法定相続分の割合でそれぞれの相続人が分筆して取得する、などの方法です。

☑代償分割

不動産を1人の相続人が取得し、他の相続人に対しては、法定相続割合に応じた代償金を支払う方法です。

換価分割

不動産を売却して、売却代金を法定相続人で分け合う方法です。

共有分割

相続人が不動産をその法定相続分割合で共有する方法です。どの方法を選択するのかについては、不動産の評価額などを踏まえ、慎重に検討する必要があります。

多数の収益不動産を持つ場合よくある相続トラブルと悩み

収益不動産の評価方法が複雑のため、遺産分割がまとまらない

不動産の評価については、遺産分割の実務では、固定資産税評価額や路線価(相続税評価額)のような公的基準や、不動産業者の査定額を参考にしながら、相続人間で評価額を合意するための協議を行うことが一般的です。

当事務所で取り扱ったケースでは、収益不動産について、賃料収入額を確定した上で、収益還元法(対象不動産を利用しどのくらいの収益を上げることが可能かに基づく)、原価法(対象不動産の再調達価格に基づく)、取引事例比較法(評価すべき不動産に近い物件の現実の取引価格に基づく)などの評価方法をもとに、不動産業者が査定額を算出し、その金額を参考にして不動産の評価額を合意して解決したことがあります。

もし、評価額で合意できない場合は、遺産分割調停を申し立て、調停手続きの中で解決を図ることが考えられます。調停手続きでは、不動産鑑定士の資格を有する家事調停委員(専門委員)の意見を尊重して不動産評価額の合意をする方法や、鑑定手続により不動産評価を行う方法があります。

収益不動産の賃料は遺産になるのか?収益不動産の賃料は誰が取得するのか?

相続が開始してから遺産分割が完了するまでの間、収益不動産から賃料が発生しています。このような収益不動産から生じる家賃は、遺産そのものではなく、各相続人が相続分に応じて取得すると理解されています。

もっとも、相続人全員がこのような賃料を遺産分割の対象として分けることに合意した場合には、遺産分割の対象として取り扱うことができます。

収益不動産の固定資産税の負担方法は?

亡くなった人名義の不動産が、遺産分割協議によって相続する人が決まるまでの間、その不動産は相続人全員の共有財産になります。

そして、その不動産に対する固定資産税の納付は相続人全員の義務になります。

実際には、相続人の中から「代表相続人」を指定し、役所に届出をして、その人が代表して固定資産税を支払うことが多いです。収益不動産の場合は、発生している賃料収入の中から支払うことも考えられます。最終的には、遺産分割協議の際に、代表者が負担した分を遺産の中から清算するなどして、公平な解決を図ることになります。

なお、令和2年度税制改正において、登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間における現所有者(相続人等)に対し、市町村の条例で定めるところにより、氏名・住所等必要な事項を申告させることができることとされました。

上記の相続トラブルの解決策

専門家へのお早めの相談を!

収益不動産については、遺産の中でも大きなウエイトを占めている場合が多く、どのように遺産分割するかについて、相続人間で争いになることがあります。

すがの総合法律事務所は、収益不動産の遺産分割につきましても多くの解決をサポートしてきた実績がありますので、収益不動産を含む遺産分割にお悩みの方は、ぜひ当事務所に御相談ください。

 

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執筆者情報

菅野亮
菅野亮
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