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納得できない遺言によくあるケース
ほとんどの財産を特定の相続人に相続させる内容の遺言など、一部の相続人が有利な内容になっている遺言書には、他の相続人が不満を持つことがあります。
もし、相続人全員で遺産分割協議を行って全員が合意すれば、遺言の内容と異なる分割をすることも可能です。
しかし、ひとりでも反対があれば、遺産分割協議は成立しないので、遺言に従った遺産の配分がなされることになります。
実際には自分に有利な遺言がある相続人は、遺言と異なる内容の遺産分割協議にはなかなか賛成しないだろうと思われます。
納得できない相続人がいるとしても、有効な遺言が存在する以上は、その遺言に従った遺産の分配がなされ、遺言の内容が遺留分を侵害している場合には遺留分侵害の請求をすることになります。
しかし、場合によっては、そもそも遺言が無効なのではないか、ということが問題となることがあります。
遺言が無効となる理由には、主に2つのケースがあります。
遺言が無効となる理由・その1 方式の違反
遺言が無効となる理由として、方式に違反しているケースがあります。
遺言は、民法の所定の形式に従って作成されなければならず、方式に違反した遺言は無効になります。
例えば、自筆証書遺言の場合、遺言者がその全文、日付、氏名を自書して、印鑑を押す必要があります。
そのため、日付がない、押印がない、全文を直筆で書いていない、など、方式に違反した遺言は無効になります。なお、法改正により、遺言書のうち、財産目録をパソコン等で作成することは可能になりました。
公正証書遺言の場合、専門家である公証人が関与するため、方式の違反が生じる可能性は低いといえますが、
遺言が無効となる理由・その2 遺言能力の欠如
実務上、遺言の無効が争われる典型的な場面は、「遺言者が認知症等のため、遺言をするのに必要な能力(遺言能力)がない」との主張がなされるケースです。
遺言能力とは、遺言の内容、法律効果を理解し判断することができる能力のことをいいます。
法律上は、成年被後見人であっても、事理弁識能力を一時回復していれば、医師二人以上の立ち会いの下、遺言をすることができます。
認知症の診断がなされているからといって、それだけで遺言能力が否定されるわけではありません。
裁判では、遺言者の年齢や病状、健康状態、精神状態等が、遺言能力の判断の重要な要素とされています。
さらに、遺言内容の複雑さ、も判断要素になります。
例えば、「全財産を長男に相続させる」といった単純な遺言と、多数の相続人に、様々な遺産を分配している遺言とでは、前者の方が内容の理解が簡単で、遺言能力が認められやすくなります。
遺言をするに至った経緯や、遺言作成の動機の有無も、遺言能力の判断に影響を与える要素です。
遺言能力の判断のためには、介護認定調査に関する資料や医療機関のカルテなどの資料を検討する必要があります。
遺言無効の主張方法
まず、相手方と交渉し、遺言が無効である理由を指摘し、遺言の無効を主張して話し合いを行うことが考えられます。
日付がないなど、単純な方式の違反の無効であれば、遺言書の外形でわかりますので相手方も無効を受け入れる可能性は高いといえるでしょう。
しかし、認知症等を理由に無効を主張する場合は、方式違反のように判断基準がはっきりとしていないため、話し合いでの決着がつかないことも大いに予想されます。
話し合いでの解決ができない場合は、裁判所に遺言の無効確認請求訴訟を提起して、裁判手続きを通じての解決を目指すことになります。
最終的に遺言が無効となれば、遺言がないことを前提に、改めて遺産分割協議をすることになります。遺言が有効となれば、遺言に従った執行がなされることになりますが、遺言内容によっては遺留分侵害の問題は残ります。
遺言無効を弁護士に相談するメリット
遺言の無効は、単純な方式違反は別として、遺言能力の争いなどは判断が難しいものです。
遺言能力の検討のためには、介護認定調査に関する資料や医療機関のカルテなどの資料が必要になり、かかる資料の取り寄せを取り寄せて検討することになります。
弁護士に相談することで、資料の取り寄せを依頼したり、検討すべき事項などを明確に整理して方針を決めたりすることができます。
また、遺言が有効であっても、遺留分侵害額請求など、その他の法的手段が可能かどうかのアドバイスを受けることができます。
当事務所では、遺言の無効調査も行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。
執筆者情報
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